TOPE-NEWS平成16年6月1日号


電子認証をめぐる現状と課題 1


進展する電子社会  国民の理解が不可欠に

≪e文書法の制定視野に≫
 今年二月六日、政府のIT戦略本部は「e-Japan戦略U加速化パッケージ」を決めた。戦略本部は「二〇〇五年までに世界最先端のIT国家になる」という国家目標を実現するために、今後、政府として取り組むべき重点施策を明確にしている。
 このパッケージによると、例えば、法令によって保存が義務付けられている財務関係書類や税務関係書類などの電子保存ができるように、早期に「e-文書法」(通称)の制定を検討するという。電子書類や文書の保存には、真実性や可視性の確保といった問題がつきまとう。
 真実性の確保とは保存されている電子文書の原本性をどのように確保し証明するかという問題でもある。ここでも電子署名の要素技術であるハッシュ値が利用される可能性がある。可視性の確保では、数年後でもコンピュータ表示が可能なようにしておくことだ。
 事業系のパソコンは資源有効利用促進法によって回収・リサイクルが義務付けられている商品だ。IT技術の進歩が早く、パソコンの寿命は一般に四年程度と認識されている。リースアウトしたパソコンの一部を保持できるか、しかも問題なく動く状態を保たなくてはならない。

≪議決権行使も電子化≫
 社団・財団といった民法法人や親睦団体・同好会といった中間法人、更にはNPO(特定非営利活動法人)の総会の議決権行使が電子的にできるようにするために、二〇〇五年度までに法制上の措置が講じられる。こうなるとこれまでのように関係者が一堂に会して総会を実施する必要もなくなる。議決権の電子行使には、当然電子認証が必要不可欠だ。

≪目標数下回った住基カード≫
 インターネットを利用する電子社会では、電子認証が必ずついて回る。しかし、電子認証に対する理解は十分とはいえない。今年一月二十九日から市町村役場の窓口で公的個人認証と呼ばれる電子証明書が発行されている。
 電子証明書の発行を受けるためには、事前に入れ物となる住民基本台帳カードの発行を受けていることが必要である。このICカード、政府は平成十五年度中に三百万枚の発行を見込んでいたが、実際には八十四万枚に留まる見通しである。国民の一%をはるかに下回る数字だ。
 写真付で市町村が発行した住民基本台帳カードは、今のところ身分証明書として利用できることから、発行を受けた市民はいる。しかし、公的個人認証を取得した人はほとんど知らない。公的個人証明書の発行は、住民基本台帳カードの発行枚数を下回る可能性が高い。ただ、これを持たないとできない電子行政手続が今後急速に増えてくると見られている。
 経済社会の電子化は、予算さえあればある程度の時間で実現できよう。しかし、問題は本当に国民に理解され、広く利用されようになるのかが次なる大きな課題であるといえる。

(高野時秀・日商情報化推進部長)
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